不正咬合と矯正について

2019年4月2日

悪い歯並びは矯正治療で治療しましょう

現代社会を生きる日本人は、硬い食べ物を食べる機会が減ってしまったため、顎骨が小さな人が多い傾向にあります。
その結果、『不正咬合』のお子さんが増加しています。
この不正咬合の増加ペースですが、「急増」といっても差し支えないほどのスピードで増加しております。
人類学的に見ると、通常では人体の進化や退化という変化は何万年や何十万年の単位で比較されます。
しかしながら、日本におけるお子さんの不正咬合はこの数十年で劇的な速さに進んでおります。
数十年前までは、歯並びの良いお子さんが多くを占めていたのに対し、現代では歯並びの良いお子さんを見つける方が難しいと言われる程です。
不正咬合を放置すると様々な問題が起こってきます。
まず、食べ物をよく咬めなくなりますし、また歯磨きもしにくいため、虫歯や歯周病になりやすくなります。
さらに不正咬合は下顎の偏位を引き起こし、顎関節の障害やさまざまな体調の不良も生み出します。
また、審美性が悪いことから生まれる劣等感など、心理的な悪影響も大きく出てしまいます。

国際化が進む中、日本人の活動も国際的になっていますが、アメリカなどでの欧米先進国の中では、不正咬合のまま矯正をしないと、きちんとした就職や結婚にも差しつかえる、という現状もあるようです。
つまり、不正咬合は、ビジネスや留学にも支障が出てしまう存在でもある、ということです。
昨今では、学校検診で不正咬合がチェックされるようになり、少子化と経済力の高まりとも相まって矯正治療の必要性への認識がかつてと比べればとても高まっている状況です。

では、その矯正治療とはどういった治療なのでしょうか。
また、不正咬合にはどんな種類があり、いつ治療をすれば良いのでしょうか。

端的に言えば、矯正治療とはいろいろな矯正装置を使いながら歯を健康な状態のまま良い位置に移動させたり、顎を正しい位置に誘導して正しい咬み合わせを確立していく、という治療です。
不正咬合には、1.クラウディング(叢生)、2.反対咬合、3.上顎前突、4.オープンバイト(開咬)、 5.顎偏位などがあり、それぞれ治療の適期があるので注意が必要です。

1.クラウディング(叢生)とは

上顎と下顎の大きさや位置には不調和がなく、顎の大きさと歯牙の大きさの総和に不調和がある場合において、全部の歯がきちんと揃うスペースが足りないために、でこぼこと乱れた歯列になっている場合がございます。
そのときに用いられるのがクラウディングです。
不調和が小さい場合は抜歯をせずに歯列の大きさを拡大して歯並びを整えます。
反対に不調和が大きい場合は抜歯(一般的には第1小臼歯を4本抜歯する方法が取られます)を行い、そのスペースを利用して正しい歯列に揃えます。
この治療は「マルチブラケット」と呼ばれ、各々の歯にブラケットを接着し、そのブラケットの溝にワイヤーのアーチを組みこみ、ゴムで引いたり、あるいはバネで押したりしながら歯を正しい位置へ動かす方法です。
ブラケットにはメタルのものと審美性の高いプラスチックやセラミックのものがございます。
また、舌側から矯正を行う「リンガルブラケット」というものもございます。
各歯牙によって最適な力を持続的にかけると、まるで歯が生えてくる時のように、健康な状態のまま歯牙が移動していきます。
この時に、歯根の周囲では、歯根膜が圧迫された側では破骨細胞が歯槽骨を溶かし、引っ張られた部分では骨芽細胞が骨を造る、という作業が行われています。
矯正治療は、この生理的な働きを待ちながら進めなければならないため、治療期間が多くかかります。
1カ月に一度程度の歯科医院でのチェックを繰り返しながら続けていくので、大体約2年程かかると言われております。

外観上はきれいにでき上がった歯列も、前述したような理由があるため、歯根の周囲は非常に不安定です。
この後は、保定装置によってギブスのように歯を正しい位置に保持しておく必要がございます。
保定装置には、取り外しができる床装置や固定式のワイヤーを接着する方法がございます。
この二種の方法の内ですと、保定の確実性や患者さんの負担が少ないことから、固定式の保定装置を選ばれる方が多くいらっしゃいます。
一般的には、保定期間は2年程と言われております。
この間に歯を支える歯槽骨がしっかりでき上がり、舌や周囲の筋肉も新しい状態に適応するようになります。
普通、クラウディングの矯正治療の抜歯症例は、永久歯列になり思春期の成長が落ち着いてから開始されることで知られており、時期で言うと男子は中学3年〜高校1年生ごろ、女子は中学2年生ごろ開始するのが一般的です。
非抜歯の場合は、まだ乳歯が残っている小学校中学年〜高学年のころから歯列の拡大を誘導していく治療を行います。

2.反対咬合とは

反対咬合には遺伝的要素の大きい骨格型のものと、歯の萌出時の早期接触による障害から生じる機能的なものがあります。
機能的な反対咬合は下顎が本来咬み込むべき位置よりも無理に前方に誘導されています。
この機能的な反対咬合は、早期に治療することによって比較的簡単に治るといわれております。
そのまま放置してしまうと、その位置のまま反対咬合ができ上がってしまったり、大人になっても長く顎の不調に悩まされることになってしまいます。
これは矯正治療を直接手がけない歯科医であっても、十分考慮に入れてお子さんたちの咬み合わせに注意したほうがよいポイントであるといえるでしょう。
反対咬合はなるべく早期に見つける必要がありますが、実際に矯正治療を開始するのはお子さんが4歳くらいのころになります。
治療の目的を理解し、治療に協力できるようになったころ、といえばわかりやすいでしょうか。

機能的な反対咬合は一般的に永久前歯の萌出する小学校低学年のころに行います。
上顎のリンガルアーチと下顎のバイトプレートが用いられる場合が一般的です。
子供の歯の生えかわりは乳歯列から、6歳臼歯の萌出が始まり、前歯の萌出、犬歯や小臼歯といった側方歯群の萌出と続いて、小学校高学年ころに上下顎の第1大臼歯まで全部で24本までの永久歯列ができ上がります。
そこまでの顎の変化は比較的緩やかです。
思春期に入り、身長の伸びが急激になる時期にお子さんの下顎骨も比例して大きくなります。
上顎骨も咬合を介して調和して発育していきますが、反対咬合のままだったり、一度反対咬合の治療をしておいても下顎骨の伸びが著しいと、反対咬合がひどくなったり、反対咬合が再び発現したりします。
これは後戻りとは区別していく必要がございます。
そのため、反対咬合の治療は早期に行う第一期治療と、思春期成長後の第二期治療に分けて行います。
骨格型の程度がひどい場合は外科的に骨を切って治す外科矯正を行う必要があります。

3.上顎前突とは

上顎前突は遺伝的なものの他に、指しやぶりなどの悪習慣によって起こります。
指しゃぶりはだいたい3歳くらいを目処に止めさせる必要があるでしょう。
上顎前突は下顎が本来の位置よりも後退したままに押えられている場合が多くを占めます。
早い時期に下顎を前方に誘導して上顎と下顎の良い関係を確立させてあげると、その後の問題を少なくすることが可能です。
下顎が後退し、上顎が前突した状態のまま放置したら、大人になってから歯周病や顎偏位による体調不良に悩むことになる可能性が高いでしょう。
この状態を正しい位置関係に治しておけば、あとはクラウディングの改善をするだけです。

4.オープンバイト(開咬)とは

オープンバイトは舌の大きさの異常や、異常な舌癖などに起因するものと、下顎第2大臼歯が埋伏している親知らずによって押されるために発生する下顎の後方への回転によって引き起こされるものの2種類がございます。
舌が関係しているオープンバイトの場合は後戻りしやすく、完全に治療することは困難ですが、後方回転によるものは驚く程改善することが多くあります。
現代の日本人は顎が小さくなっており、親知らずが前方に傾いて埋伏しているケースがとても多いため、このような不正を起こしてしまう前に抜歯していただくのが賢明です。

5.顎偏位とは

顎偏位は、これは今まで述べてきた不正咬合と複合する問題ですが、現代の日本人は骨格的にも筋力的にも退化してきているため、多くの問題を引き起こしているケースが非常に多くあります。
そのため、成長期のお子さんたちが顎偏位を起こさないよう早期に改善していかなければなりません。
成人になってからの顎偏位は矯正治療だけでは問題を解決することができないことも多く、咬合治療とタイアップした治療を行う必要がございます。

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